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腸を良い状態にすることで体が元気になるテクノロジー

近年「腸活」の広まりとともに注目されている食物繊維。身近なようで、実は意外と誤解されていることが多い成分です。巷にあふれる食物繊維の情報について、大妻女子大学家政学部教授・青江誠一郎先生に伺いました。

「食物繊維は、腸活には欠かせない成分。腸内環境が悪くなり腐敗物質が出ると、肌荒れ、基礎代謝の低下、脂肪肝、睡眠の質の低下など、健康を害する影響が出てきてしまいますが、デトックスするよりも、その腐敗物質を作らない方が効率的。食物繊維を摂って腐敗物質の発生しづらい腸内環境を目指しましょう」(青江先生)

“食物繊維”の情報はウソ?ホント?

❌ 答え:×

食物繊維には、実はさまざまな種類があります。

水溶性の食物繊維(発酵性食物繊維※1)は善玉菌のエサになり、腸内細菌を増やすことができる「育菌」のための食物繊維。不溶性食物繊維は、水に溶けないので便の量を増やし、腸の蠕動運動を活発にするための食物繊維となります。

さらに水溶性、不溶性という分類だけでなく、オリゴ糖やレジスタントスターチなども食物繊維に含まれます。

大切なのは、どんな種類の繊維をどれだけ摂るか、というバランス。食品には複数の種類の食物繊維が自然に含まれている一方で、サプリで摂れるのは限られた種類のみなので、腸内で働く菌のバランスを整えるには不十分なことも。

サプリに頼りきるのではなく、まずは日々の食事からバランスよく摂取し、不足分をサプリで補うのが理想です。

🔺 答え:△

まずは量。量が達成されたら質にも意識を向けましょう。ですが、食事から量を確保すれば、おのずと質も担保されるもの。まずは、どの食材が豊富か知り、主食を抜かない食生活を実践しましょう。

🔺 答え:△

葉野菜は、食物繊維がゼロではありませんが、重量に対して90%は水分です。お腹がいっぱいになるのも、水で満たされているようなもの。生の葉野菜は想像以上に食物繊維が少ないので、サラダを食べる時は根菜類、海藻類もトッピングしましょう。

⭕️ 答え:○

難消化性オリゴ糖は、非デンプン性の食物繊維の1種です。甘味料としてのオリゴ糖は難消化性なので、善玉菌のエサとなり、育菌につながります。

⭕️ 答え:○

腸活は朝がおすすめです。朝食で食物繊維を摂れば、お昼から夜にかけて、つまり1日中大腸内で発酵します。夜摂ると、寝ている間は腸が休み、朝から発酵をするので、朝のタイミングを逃したからといってその日1日は食物繊維を摂らない…のではなく、なるべく朝に比重を置き、1日の中で分けて摂取するといいでしょう。

また、炭水化物を朝摂ることで体内時計もリセットされやすくなり、その日のパフォーマンスも上がることもわかっています。

🔺 答え:△

腸が正常に動いている状態であれば、摂りすぎて詰まることはありません。逆に、食物繊維目標摂取量1日20gは妥協の産物。本当は25~30gが理想で、30g以上摂っても効果が出ると言われています。なので、「理想量以上もっと取って下さい」とお願いしたいぐらいなのです。

ただし、摂り過ぎで注意なのは市販の食物繊維配合飲料水。一気に大腸まで届くので、効きすぎてしまう可能性があります。摂り過ぎには注意しましょう。

現在、便秘の人は、便秘の理由を知ることが大事。食物繊維が足りていなくて便秘の場合と、病的な原因で腸が動いていない便秘の場合があります。

食物繊維が足りない人は、食生活を改善すれば便秘が治るかもしれませんが、腸が病的な原因で動いていない人は、食物繊維を摂りすぎると詰まってしまうことが。その場合はお医者さんに相談し、腸の動きを改善してから食生活も改善するといいでしょう。

⭕️ 答え:○

豆類やナッツ類には食物繊維が豊富に含まれているので、3食で摂りきれなかったら、おやつで補うのも一つの手です。スナック菓子なら、ナッツが入ったバーのようなものを選ぶのもいいでしょう。ポテトチップスはレジスタントスターチですが、油で揚げているものは悪玉菌を増やして腸内環境を乱すので、注意しましょう。

❌ 答え:×

食物繊維は種類があります。水溶性の食物繊維は善玉菌のエサになり、腸内細菌を増やす育菌に効果を発揮します。不溶性食物繊維は水に溶けないので便の量を増やし、腸の蠕動運動を活発にします。

つまり、食物繊維は便秘改善だけのために摂りたい成分ではなく、育菌にも作用します。

食物繊維の摂取量が減ってしまうと、腸内の腐敗物質が多くなりそれが全身に回り、お肌が荒れてくすんだり、疲れやすくなったり、新陳代謝が悪くなって太りやすい体質にも。アルコール摂取をしていないのに脂肪肝になったり、大腸癌の原因にも。また、妊娠している女性は食物繊維の摂取量が減り、腸内細菌が減ってしまうと、子供の腸内細菌の種類が少なくなってしまうことがわかっています。便秘でなくても、健康維持のためにも食物繊維は多く摂るようにしたいですね。

🔺 答え:△

炭水化物は食物繊維があるので、腸活的には1品でも悪いわけではありません。ただ、多様な食品から食物繊維を摂った方がいいので、副菜をプラスしたり、トッピングを工夫するとより良いでしょう。

たとえば、おにぎりならまずもち麦、雑穀米などを選び、具材も豆類、海藻類のものを。それだけで数gの食物繊維を摂れます。そこに根菜類の副菜をプラスすればより良いですね。

ラーメンならトウモロコシやモヤシをトッピング(ただし、スープを全部飲むと塩分・脂質過多となるので注意)。お蕎麦はそれ自体、食物繊維が豊富ですが、海藻系がトッピングだとより良いかと思います。カレーはじゃがいもを具材に選んだり、レジスタントスターチが豊富なタイ米を選ぶのもおすすめです。一品メニューでも、具材や素材を意識するだけで腸活に有効なのです。

❌ 答え:×

ご飯やパン、芋類は温めた方が美味しい場合が多いですが、善玉菌のエサとなり、体にとっていい働きをする短鎖脂肪酸を生み出すもととなる“レジスタントスターチ”は、冷ますことで多くなります。

冷めたり、冷凍したものをレンジで再度温めても、レジスタントスターチは増えたままなので、家族の中で自分だけ玄米・雑穀米を食べるという人は、多めに炊いて冷凍保存しておくのもおすすめです。

🔺 答え:△

高齢の方や体を鍛えている方の中には、たんぱく質を沢山摂るためにプロテインを常飲している方がいますが、たんぱく質を摂り過ぎるとアンモニアや腐敗物が増え、腸内細菌のバランスが乱れてしまいます。でも、そこに発酵性食物繊維(※1)があれば乱れません。プロテインなどで大量のたんぱく質を摂る時は、食物繊維も一緒に摂るようにしましょう。

食物繊維を意識した食生活の改善は、1〜2週間で効果が見えてきます。

初めはガスが多くなりがちですが、数年先の健康のために、気にせず育菌を続けてみましょう。

※1:発酵性食物繊維は多くの水溶性食物繊維と不溶性食物繊維のレジスタントスターチをさします。

今回教えてくれたのは…

  • 大妻女子大学家政学部教授/栄養学者(食物繊維) : 青江誠一郎

    日本食物繊維学会理事長。食物繊維やメタボ予防に関する研究の第一人者で、NHK『あしたが変わるトリセツショー』での監修も話題に。「育菌カード」考案者としても知られる。

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  • ライター

    味澤彩子

    ライター歴20年以上、多数の女性ファッション誌や美容誌で活躍。
    趣味はバレエ鑑賞、韓ドラ、フランス旅行など、ハマるととことん
    突き詰める深掘り派。

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