春は季節の変わり目であり、多くの人にとって自律神経が乱れやすい季節。気温や気圧の変化による心身のストレスなどが要因となって体が不調になることがあり、梅雨の時期まで続くと言われています。また、自律神経をケアする方法のひとつに「腸活」が関わっています。
今回は、日ごろから患者さんたちに自律神経や生活習慣について指導している、医学博士の芦刈伊世子先生に、「腸と自律神経の関係」や「血流アップ術」について伺いました。
「腸」と「脳」は強く連携している
血流をよくすることで、腸と自律神経を同時に整える
「自律神経は3つあります。
1.交感神経系
2.副交感神経系
3.腸神経系
交感神経系と副交感神経系がバランスよく働くことで、心臓や腸など臓器の調和が保たれます。腸神経系は腸に張り巡らされており、内臓の働きをコントロールします。食べ物が入ると、自動的に消化液を増やしたり、腸を動かしたりします。
また、腸の中には「EC細胞(イーシー細胞)」という特殊な細胞がいて、腸内細菌とコミュニケーションをとりながら、“セロトニン”を作ります。セロトニンは“幸せホルモン”とも呼ばれ、うつなどの症状を回復に向かわせます。実は、このセロトニンの95%は、腸で作られていると言われています。なので、腸の調子がよいと、体調もよいのです。
また、お腹の中の自律神経は腹大動脈という大きな血管の周りを通って、いろいろな臓器へと伸びています。そのため、腹大動脈のまわりの血液の流れをよくすると、自律神経や腸の神経の働きも整いやすくなります。つまり、お腹の血流をよくすると、自律神経や腸の神経がきちんと働くというわけです。たとえば、お腹をあたためる、深呼吸をしてリラックスする、腸をやさしくマッサージする、なども血流アップに役立ちます。」(芦刈先生)
2つの運動で血流をアップさせて腸神経を活性化させる血流アップ術
「血流をよくする方法でおすすめしたいものが2つあります。西式健康法の運動療法のうち『毛管運動』と『背腹運動』です。」(芦刈先生)
朝活と夜活に!『毛管運動』(1~2分行う)
血液を全身に循環するポンプは心臓ですが、手足の末端をぶらぶらと揺らすことで、毛細血管より細い微小な血管もうっ血や停滞が防げるはずです。神経がバランスよく働くためには、血行を良くすることが重要です。

- 平らな床にあお向けに寝て、木枕やクッションを首の下に入れる(手足の水分が一気に頭に流れるのを防ぐため、必ず行ってください)
- 手指は全てくっつけ、足首は90度に曲げて固定。かかとを天井に向けて足裏が床面と水平になるようにし、膝の裏も伸ばす
- 手足の振り方は、微振動で「けいれん」するように細かく ※途中で手足が疲れたら、手足を上げたまま休憩してもよい
『背腹運動』(振り子運動)
- 足を大きく開いて、両手を両足にのせる。
- その次に骨盤を中心に脊椎を左右にメトロノームの振り子のように少し早い速度で振る運動をする。右に振るときは腹を前に出す。中心に来たら腹はへこませる。左に振るときは腹を再び前に出す。
- この2つの動作を同時に行う。




「これはかなり激しい筋肉運動で、腹大動脈の周囲に走行する自律神経を物理的に伸縮させ、腹を出したり入れたりすることで、腸神経系にもアプローチします。「良くなる、能くなる、善くなる」という自己暗示をかけながら行うことも大切です。これは物理的な「腸活」ともいえます。コツは、ヒップホップダンスのように、腹胸を前に出したりへこませたりするアイソレーションをイメージしてください。」(芦刈先生)
まとめ:
✅春や梅雨の時期は寒暖差や気圧の変化により神経系の調和が乱れやすい
✅自律神経と腸は、お互いに作用している
✅血流をよくして、腸神経を含む自律神経を活性化する
忙しい人ほど体を動かすことを忘れがち。簡単な方法を少しずつ生活に取り入れて腸を活性化させ、自律神経を整えるために血行をよくしていきましょう。
参考出典: Tischler, A.S. et al. N.Y. Acad. Sci.2002:971;366-370
今回教えてくれたのは…
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あしかりクリニック 院長 : 芦刈伊世子
医療法人社団 あしかりクリニック院長。医学博士。精神科・神経科・心療内科の診療のほか脳と心の予防センターを併設。2015年9月、東京都の委託で中野区の地域連携型認知症医療センター併設。メンタル不調、更年期障害、不眠症、認知症など様々な疾患の診断・専門治療をしている。NPO法人日本綜合医学会会長。著書には『365日、玄米で認知症予防 脳がよろこぶ、玄米・魚・野菜』(2016年)がある。
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