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腸を良い状態にすることで体が元気になるテクノロジー

最近、ガーデニングをはじめとする「土いじり」が再注目されています。土遊びをした園児は、そうでない園児に比べて免疫力が高く、腸内細菌の種類も多様であるという研究も発表され、話題となりました。
今回は、愛媛県で薬剤師をしながら兼業農家として野菜の栽培を手掛けている、鈴木健さんに「腸活とガーデニング」について伺いました。

土中の細菌や微生物が皮膚から腸を刺激して免疫力UP

昔から、土に触れることは人間にとって良いとされてきました。最近では、科学的にもその効果が注目されています。特に、土壌中の細菌が人間の皮膚や粘膜に刺激を与えることで、腸内細菌叢に影響を与え、腸内環境のバランスを整える可能性があります。

2020年にフィンランド自然資源研究所(Luke)が発表した論文(※)では、土遊びをした園児の皮膚に、大腸菌、サルモネラ菌、酪酸菌など、土壌に含まれる多様な微生物が確認され、さらに、同様の細菌が腸内にも見られたことから、土壌との接触が腸内環境に影響を与えることがわかりました。

※出典:Roslund MI, et al., Biodiversity intervention enhances immune regulation and health-associated commensal microbiota among daycare children, Science advances. 2020 10;6(42); pii: eaba2578.
https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.aba2578

この研究結果からも意識的に土と触れ合う機会を作ることで、腸に有益な細菌が増え、腸活につながると考えられます。都会に住んでいてもガーデニングを楽しんだり、ハイキングやキャンプに出かけて自然の中で土に触れる時間を持つことは、結果として腸活につながります。

畑仕事で腸が実感!“土いじり”で心身ともにリラックス

ガーデニングが腸に良い影響をもたらす理由は他にもあります。まず、無農薬で育てた野菜は、腸への負担が軽くなります。無農薬の野菜は、腸内細菌叢のバランスを乱さないため、腸への負担が軽減されます。さらに、収穫した野菜を漬物などの発酵食品にして食べれば、腸内の善玉菌を増やすことができ、腸内環境をより良好に整える効果も期待できます。

そして、野菜を育てることで食べ物への関心が深まり、健康な食生活になります。自分の手で野菜を育てる経験は、食べ物への関心を深めるきっかけになります。ガーデニングを続けることで、食の選び方にも意識が向き、より健康的な食生活を自然と実践できるようになります。

最後に私自身の経験として、畑を始めてから、収穫した野菜を毎日たっぷりと食べるようになったことで、便通が安定し、腸の調子がとても良くなりました。野菜に含まれる食物繊維のおかげで、お腹の中が常にすっきりしている感覚があります。さらに、畑仕事はリラックス効果も高く、ストレスが減った実感があります。腸はストレスに敏感なので、コルチゾール(ストレスホルモン)が抑えられることで、腸内の善玉菌が減りにくくなり、腸内環境の安定にもつながっていると感じています。

腸活を目的に育てるおすすめ野菜4選

腸活を目的に育てるおすすめの野菜は4つあります。

ベランダでも簡単に育ち、プランターで手軽に始められます。

✅オクラ

オクラには、水溶性食物繊維が豊富に含まれています。水溶性食物繊維は普段の食生活では意識しないと摂りにくいため、オクラはとても貴重な食材です。特に、味噌汁の具材にすると、味噌に含まれる善玉菌がいっしょに摂れるので、腸内環境の改善に役立ちます。
また、オクラはプランターでも簡単に育てることができ、上に伸びて育つため、省スペースで栽培できるのも魅力です。たくさん収穫できるので、家庭菜園初心者にもおすすめです。

✅ほうれん草・小松菜

どちらも家庭菜園に適した野菜で、初心者にも育てやすいのが特徴です。これらの葉物野菜には葉緑素(クロロフィル)が豊富に含まれており、「腸の掃除屋さん」とも呼ばれるほど、腸内の老廃物を取り除く働きが期待できます。また、スーパーなどで購入すると時期や天候により高値なことも多いため、自分で育てることで節約にもつながります。

✅ブロッコリー

ブロッコリーは、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維が両方含まれており、腸活に最適な野菜です。腸内環境を整えるうえで、この2種類の食物繊維をバランス良く摂ることはとても重要です。
また、ブロッコリーは冬野菜のため、寒い時期でも育てることができます。実際に育ててみると思いのほか順調に成長しやすく、収穫量も見込めるため、コストパフォーマンスの面でも優れています。

✅大葉

大葉には葉緑素(クロロフィル)が豊富に含まれており、腸内の老廃物をやさしく、そして細やかに掃除してくれる働きがあります。
大葉は栽培も非常に簡単で、一度育て始めると驚くほど増えていきます。そのため、庭に直接植えると増えすぎてしまうこともあるため、プランターでの栽培がおすすめです。さらに、大葉にはリラックス効果があり、食べることでイライラやモヤモヤをスーッと和らげてくれると言われています。

ガーデニングで野菜を育てることは、健康的な食生活や心身のリフレッシュだけではなく、腸内環境を整えるという嬉しい影響ももたらします。プランターで簡単に始められるので、ぜひお試しください。

今回教えてくれたのは…

  • 薬剤師・兼業農家 : 鈴木健

    愛媛県で漢方相談薬局を営み、30~50代女性を中心に、心と体の不調に寄り添う漢方相談やカウンセリングを行っている。漢方だけでなく、心理学・東洋思想・脳科学などを深く学び、「生きづらさを抱える人が、自分らしく整って生き直す」ためのサポートに力を注いでいる。

    SNSを通して、「ちゃんとしなきゃ」とがんばりすぎる優しい人に自分に優しくする方法を届けている。薬剤師・心理カウンセラー、漢方相談歴15年、相談件数 年3000件以上、会員制 自律神経Lab.運営中。2021年より、「医は食に、食は農に、脳は自然に」というモットーのもと、薬局に隣接する畑で農業を開始。

    Instagram:@suzuki_kanpo

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  • ライター

    竹上 裕子

    メディア歴20年以上、テレビ局と広告代理店で経験を積み、フリーランスとして活動中。ヘルスケアに興味があり、食や健康に関する資格を多数保有。

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