最近何かと耳にする“骨盤底筋群(こつばんていきんぐん)”。膣トレや尿漏れ対策の一種のようなイメージがありますが、実は便秘解消や腸活とも関係があるようです。トレーニング法と、便秘解消以外のメリットについて江田クリニック院長・江田 証先生にお話を伺いました。
骨盤底筋群が鍛えられると腹圧コントロールが改善
便秘の要因の一つに、加齢と共に起きる骨盤底筋群の衰えがあります。骨盤底筋群は主に便を押し出すときに使う筋肉で、坐骨結節(椅子に座って両手のひらを上向きにしてお尻の下に置いたときに指が触れる硬い骨の出っ張り)の間に位置しています。膀胱や子宮、直腸などといった内臓を下から支える役割を担っている重要な筋肉です。
この筋肉が鍛えられると腹圧コントロールが改善して、排便力がアップ。便が腸内に停滞する時間が短くなり、3か月で便秘の症状が37%減少します。

腸のバリア機能アップや炎症物質の排出にも効果的
また、骨盤底筋群をトレーニングすると腸の毛細血管の血流が20〜30%増加して血流が良くなります。すると、酸素や栄養が腸の粘膜に届きやすくなり腸のバリア機能がアップ。
リンパの流れも良くなるので、悪い物質を排出しやすくなり、腐敗を起こす腸内細菌が減少するというメリットも。
内臓下垂による腸への圧迫も改善されます
骨盤底筋群は内臓を正しい位置で支える役割も担っており、そこが衰えると内臓が下がる「内臓下垂」のリスクが高まります。内臓下垂になると胃や腸などの消化器官が圧迫され、消化機能が低下することも。骨盤底筋群が鍛えられて骨盤の安定性を整えると、これらの問題も改善につながります。
立って、座って、寝転んで。ながらでできる骨盤底筋群トレーニング
骨盤底筋群は、肛門の周りの筋肉を意識して、しめる⇨ゆるめるの動作をゆっくり繰り返すことで、鍛えられます。手や足を大胆に動かす必要がなく、作業しながらもやりやすい簡単なトレーニング。仕事中や家事、リラックスタイムにできる動きを紹介します。1セット20回を1日3セットが理想です。
仕事中もこっそりできる座り姿勢
- 椅子に座り、足を肩幅に開いて足裏をぴったり床につける
- 肛門周りの筋肉をぎゅっと締めて5秒キープしてゆるめる
キッチン作業の間にできる立ちポーズ
- まっすぐに立ち、足を肩幅に開く
- 腰の高さの台などに手をついて体重をかけ、お尻周りの筋肉をぎゅっと締めて5秒キープしてゆるめる
寝る前にサクッと。仰向けポーズ
- 仰向けに寝て、足を肩幅に開き、両膝を軽く曲げた状態にする
- 腕を床に置いて体重をかけ、肛門を締めながら体が一直線になるようにお尻を浮かせる
骨盤底筋群トレーニングでお腹周りがスッキリ
骨盤底筋群を鍛えることで、便秘改善効果だけでなく、内臓の位置が整ってぽっこりお腹の改善にも。毎日のながらトレーニングで心身共にスッキリ感を得ることができそうです。
監修/江田証
今回教えてくれたのは…
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江田クリニック院長 : 江田証
医学博士。日本消化器病学会専門医。日本消化器内視鏡学会専門医。栃木県にある江田クリニックの院長を務める一方、『世界一受けたい授業』(日本テレビ)などテレビやラジオ、雑誌などに多数出演。著書に19万部を超えたベストセラー『新しい腸の教科書』(池田書店)のほか、『すごい酪酸菌』(幻冬舎)、『腸のトリセツ』(Gakken)など多数。
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