災害が起きて避難所などの生活になると、生活環境の急変により体調を崩しやすくなります。また、ストレスから腸内環境が乱れると、心身ともに疲れやすくなってしまうため、非常時の“腸”にも備えは大切です。
今回は、管理栄養士歴26年のキャリアを持ち、防災士としても活躍中の神田由佳さんに「知っておきたい災害時の腸の整え方」について伺いました。
極度のストレス状態から乱れやすくなる腸内環境
――災害が起こると、腸にどのような影響がありますか?
「災害時は、災害のショックや生活環境の変化から極度のストレスを感じます。ストレスホルモンが増加すると自律神経が乱れやすくなります。自律神経が乱れると腸の動きが鈍くなり、下痢や便秘などの症状があらわれやすくなります。特に避難所生活は、食事が不規則になりがちで腸内環境が乱れやすくなり、免疫力が低下する可能性も高まります。」(神田由佳さん)
災害時の腸を不調から守る“備え”を知る
――腸の不調により生じる健康リスクを予防する方法はありますか?
「はい。避難所など自宅以外での生活となった場合、前章でお話ししたような自律神経の乱れや便秘・下痢などの不調が起こりやすいと考えられますが、腸の不調を防ぐことで、少しでも心や体を整える助けになるかもしれません。その心得として、次のことを準備しておくと安心です。」(神田由佳さん)
✅水は1人1日3ℓ×3日分が理想

避難所生活では、水分不足による便秘が多いといわれています。断水やトイレを気軽に使えない環境で水分補給が後回しになりやすいため、意識的に水分を摂るようにしましょう。また、水が手に入らないことを考えて、「1人1日3ℓを3日分」が理想とされています。
✅非常用トイレやおしりふきがあると便利

災害時、困りごとランキング上位に「トイレ」があります。排せつの安心は生きる力にもつながります。非常時用トイレを購入したら、一度練習しておくと、災害時のストレス軽減につながります。また、おしりふきもあると衛生的です。普段から自分の便の状態を意識しておけば、非常時でも焦らずに対応できます。
✅整腸剤などの常備薬があると安心

日頃は便秘や下痢症状がない方も、便秘薬や水なしで飲める整腸剤などを準備しておくと安心できます。何を選んでよいかわからない場合は、かかりつけ医や薬剤師に相談してください。
✅お腹の辺りをこまめにマッサージ
被災時はストレスから自律神経が乱れやすく、腸の動きが鈍くなるといわれています。また、寒い時期は体が冷えやすくなり、冷えからも腸の働きが鈍ります。お腹の上から手で軽く腸をマッサージすると、腸が温まり、腸への刺激となり、腸の動きを活性化させられます。
非常時の備えは、ご自身が安心して使えるものが理想です。できるだけ普段の生活で使っているものだとよいでしょう。
災害時でも腸を整えられる非常食の選び方

――災害時、腸の不調を引き起こさないために何を選べばよいですか?
「避難所などではおにぎりやパンといった糖質中心の食事が続くため、不足しやすい栄養素にビタミンやミネラル、食物繊維といった栄養素があります。腸を整えるために重要な栄養素は、食物繊維、炭水化物、タンパク質、ビタミンをバランスよく摂ること。日頃の腸活にも役立つので、ローリングストックしていけば、無理なく災害時の準備へとつなげられます。」(神田由佳さん)

✅炭水化物:米、パン、パスタ、乾パン、ビスケット
✅タンパク質:ツナ缶、豆類、サバ缶、鮭缶、焼き鳥缶
✅ビタミン:フルーツ缶、野菜ジュース、ドライフルーツ、梅干し、乾燥野菜(干した野菜には食物繊維も豊富に含まれています)
✅発酵食品:味噌
「また、電力やガスが使えないことを考慮すると、開けてすぐに食べられる缶詰は手軽に準備でき、腸を整えるのに一役かってくれます。普段から食べ慣れた味を見つけておくと、災害時にも安心して食べられます。」(神田由佳さん)
災害のニュースやこのような記事にふれた時、自身の災害時の状況をイメージしてみることも大切です。神田さんは「非常時でも普段の生活に近い状態をなるべく保てるように、腸を整えて健康的に過ごせるよう、気づいた時に準備することが理想」だと言います。腸内環境の維持は免疫力やメンタルの安定にも関わるため、災害時にも強い“腸”を作っておくことも備えの一つになるはずです。
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今回教えてくれたのは…
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防災士 : 神田由佳
防災士。管理栄養士歴26年で2万5千人に栄養相談を行う。現在は、栄養学、食品衛生学、子どもの食と栄養について専門学校で指導。食べたい気持ちを我慢せずに、数値の改善とともに体全部が健康になる方法を模索し、カロリーや栄養バランスを気にしなくても、簡単な食事で健康になる食事法を確立。人生を楽しく豊かにする食事で、健康なからだを作る方法を伝えている。
公式サイト:https://nutritionist-y.com/
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