普段はあまり意識しない唾液。でも実は、唾液には健康や免疫力、腸内環境にまで影響する重要な役割を担った抗体が存在しているといいます。そこで今回は、神奈川歯科大学大学院の槻木恵一教授に「唾液と腸活の意外なつながり」について教えていただきました。
そもそも唾液ってナニ!?
唾液は、私たちの口の中をうるおし、ばい菌から守る大切な存在です。唾液があることで、口の中の細菌が増えすぎるのを防ぎ、虫歯や口臭、飲み込みにくさを防いでいます。
しかも唾液は、ストレスや感情によっても分泌量が変わるという“全身とつながった働き”をしていることもわかっています。
唾液は“免疫の最前線”でもある
私たちの体は、「免疫」という仕組みでウイルスやばい菌の侵入を防いでいます。実は、風邪などの感染の約90%は、口や鼻、喉、腸などの“粘膜”から始まると言われています。口の粘膜は、特にウイルスやばい菌との接触が多く、唾液は“免疫の最前線”でもあるということですね。唾液は、私たちの祖先が海から陸へ上がった約4億年前に獲得したとされています。水中で暮らしていた魚には唾液がないのもこのためで、唾液はまさに“陸で生き抜くための知恵”だったのです。そして、粘膜を守る免疫=粘膜免疫が進化により登場します。
粘膜免疫のカギは、「IgA(アイ・ジー・エー)」という抗体
唾液や、腸などの粘膜に多く存在するのが「IgA抗体」。これは、ばい菌やウイルスの侵入をブロックしてくれる、頼もしい存在です。
さらに、IgAにはこんな特徴があります。
- 粘膜での防御(第一の壁)により、体への異物の侵入を阻止する予防抗体である
- 口用・腸用など、場所に応じた“専門型IgA”がある
つまり、唾液の中にあるIgAは、口の健康を守る専門部隊です。腸にも大量のIgAが存在し腸の健康を専門的に守ります。腸の免疫力が向上すると唾液のIgAも増加します。その点では、腸の健康は口の健康にもつながっているといえます。
短鎖脂肪酸が増えると唾液の「IgA」も増える
「IgA」はセルフケアで増やせるというのがポイントです。一番良い方法は、発酵食品や食物繊維を毎日しっかりと摂取する生活習慣を取り入れることです。これにより、「IgA」は増加します。これは、1だったものが3になるということで、その増加した値は、食べ続けることで維持できます。一方、ガム咀嚼でもIgAは唾液中に増加しますが、咀嚼後は元に戻るので、もともと値の低い人では低い状態は変わりません。なぜ食物繊維を摂取することが重要なのか、それは食物繊維を摂ると、大腸で発酵が起こり、その際に短鎖脂肪酸という物質が生成されます。この短鎖脂肪酸は腸内環境を整え、免疫力を高める働きがあります。そして、この短鎖脂肪酸は唾液にも影響を与えることがわかってきました。完全に証明されているわけではありませんが、短鎖脂肪酸が増えることで、唾液中の「IgA」も増加することが確認されつつあります。

「IgA」を増やすには毎日の発酵食品と食物繊維の継続がカギ!
「IgA」を増やすためには、基本的には3〜4週間以上、発酵食品や食物繊維を毎日しっかり食べ続けることが大切です。今日食べたからといって、明日すぐに効果が現れるわけではありません。継続して食べることが非常に重要です。
おすすめの量としては、
✅ヨーグルトなら1日100g
✅納豆なら1日1パック
また食物繊維もできるだけしっかりと摂るようにしましょう。
逆に、一度に食べすぎても効果はありません。例えば、今日は納豆、今日はヨーグルトといった具合に、発酵食品を工夫して食生活に取り入れると良いと思います。


唾液は、私たちの健康を守るための大切な液体であり、特に免疫機能において重要な役割を果たす「IgA」と「短鎖脂肪酸」には関わりがあると考えられています。
食生活を意識して、唾液の力を最大限に活用していきましょう。
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今回教えてくれたのは…
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歯科医師 : 槻木恵一
特定非営利活動法人日本唾液ケア科学会理事長。神奈川歯科大学大学院口腔科学講座環境病理学教授。1967年東京都生まれ。1993年神奈川歯科大学歯学部卒業。1997年同大学大学院歯学研究科修了歯学博士。2007年より同大学教授。専門分野は環境病理学。プレバイオテックスの一種であるフラクトオリゴ糖の継続摂取による唾液中IgAの分泌量増加とともに、そのメカニズムとして腸管内で短鎖脂肪酸が重要な役割を果たすことをあきらかにし、「腸―唾液腺相関」を発見した。ホンマでっか!TV、予約殺到!スゴ腕の専門外来SP、めざましテレビなどのメディアにも出演。
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ライター
浜口 順子1985年大阪生まれ。 2001年芸能界デビュー。芸歴20年を迎えた時、人生を改めて見つめ直し、高校生からずっと憧れていた放送作家への道を進むことに。 今は、「書けて話せる」ハイブリッドな人を目指して奮闘中! 腸活は体も心も元気でいるために、ずっと興味がある永遠のテーマ。現在育児中でもあるので、子どもの健康や腸活も気になっています。
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