健康のカギを握ると言われている「腸」。そして、人間の体で唯一“外から見える臓器”である「肌」も、腸の影響を大きく受けているといいます。その理由は、“自律神経”にあるのだとか。
最近よく耳にする「自律神経」と「腸活」、そして「美容」。それぞれがどんな関係でつながっているのか——。
自律神経の第一人者であり、自身も“超美肌”で知られる順天堂大学医学部教授・小林弘幸先生にお話をうかがいました。
健康と美肌、どちらにも共通するのは「血流」
人間の体には、約37兆個もの細胞があると言われています。これらの細胞が活動するためには、酸素と栄養が必要で、それらを運ぶのが血液です。老廃物の排出もまた血流の役割で、血液の巡りが良ければ、肌の細胞のすみずみにまで栄養が届き、老廃物もきちんと流されていきます。
その結果、肌は健やかに、美しく育っていきます。
つまり、美肌にとって「良質な血液を、しっかり流すこと」が非常に重要なのです。
血流をコントロールする“司令塔”、それが自律神経
では、その血流をコントロールしているのは何でしょうか?
それが、まさに「自律神経」です。自律神経は体のライフラインとも言われており、すべての臓器や血流の動きをつかさどっています。つまり、この自律神経が乱れてしまうと、健康も美容も損なわれてしまうのです。
自律神経には2つの働きがあります。
- 交感神経(アクセル):心身を活動モードにする
- 副交感神経(ブレーキ):リラックスモードに導く
これらは24時間常にどちらかが優位な状態で働いており、1:1のバランスが理想とされています。
- 交感神経が強くなりすぎると、心身が興奮状態となり、血流が悪くなります。
- 一方、副交感神経が強すぎると、やる気が起きず、心身ともに低調になります。
理想的な自律神経の働き方は、朝に交感神経が活発になり、昼にピークを迎え、夕方から夜にかけて副交感神経が優位になるというリズム。この流れが、健康に過ごすための基盤になります。
自律神経と腸の“相互関係”にも注目
ここまでで「血流=自律神経」がカギであることがわかりましたが、では血液そのものの“質”を左右するものは?
それが「腸内環境」です。
つまり、美肌には:
- 血流(=自律神経)
- 血液の質(=腸内環境)
この2つの柱が必要不可欠なのです。

「脳腸相関」という考え方
では、腸内環境と、自律神経はどんな関係性があるのでしょうか? 実は腸と脳は、互いに影響し合う関係にあります。たとえば、緊張するとお腹を下したり、ストレスで便秘になるのも「脳腸相関」の一例です。
これは、副交感神経の中枢である「迷走神経」が脳と腸を直接つなぎ、情報伝達をしているからだとされています。
腸内環境が整えば自律神経も整う。
逆に、自律神経が整えば腸も整う——。
腸と自律神経は、お互いに支え合う関係にあるのです。
実は「脳は第二の腸」だった?
「腸は第二の脳」とよく言われますが、私は“脳は第二の腸”だと思っています。
その理由は、すべての生物に腸があり、まず腸が形成されてから脳や他の臓器、作られていくから。腸はまだまだ解明されていない“未知の臓器”でありながら、脳や精神状態にまで影響を及ぼす存在です。
美肌に欠かせない「腸活」の重要性
肌には、外部刺激から守り肌内部の水分蒸発を防ぐ「バリア機能」があります。この機能が高いと、紫外線ダメージや乾燥に強く、みずみずしい肌が保たれます。
- バリア機能は「血流(自律神経)」と「血液の質(腸)」の両方で決まる
- 血流が悪いと水分代謝が落ち、さらに乾燥肌の原因になり、乾燥肌の負の連鎖に
- 乾燥はシミ・シワ・くすみ、ハリなどすべての肌悩みの根本になる
つまり、腸活で腸内環境を整え、血流を促すことで、肌の様々な悩みの予防にもつながるのです。
自律神経の乱れが、便秘や肌荒れを引き起こす?
交感神経が優位になると、腸のぜん動運動が低下して便秘になりやすくなります。
すると便が腸内に停滞し、腸壁に炎症が起き、毒素やウイルスが体内に入りやすくなります。
さらに、悪玉菌が増えると硫化水素やアンモニアなどの有害物質が発生し、肌トラブルの原因にも。
実際、スキンケアでは治らなかった肌荒れが、腸活で改善したという例も少なくありません。
これはまさに、腸と脳の相互関係によるものと考えられています。

自律神経はコントロールできない。でも、腸は整えられる
自律神経は、自分の意志でコントロールすることはできません。
ですが、腸は日々の生活習慣で整えることができます。
そして、腸が整えば、自律神経も整う。
この“相互作用”をうまく利用することで、美肌や健康へのアプローチは格段に変わってくるのです。腸活は美肌への近道なのです!
次回の記事では、あなたの「自律神経のタイプ」がわかるセルフチェックを公開!
自分に合った腸活のヒントも見えてくるかもしれません。
あわせて読みたい
今回教えてくれたのは…
-
順天堂大学医学部教授/日本スポーツ協会公認スポーツドクター : 小林弘幸
自律神経と腸の研究の第一人者。著書に『名医が教える自律神経できれいになるメソッド50』(ポプラ社)、『医師が教える1分腸活』(自由国民社)など多数。
記事をシェア