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腸を良い状態にすることで体が元気になるテクノロジー

日本は世界的に見ても肥満率が低い国。でも、ダイエット人気は根強く、最近はロカボ(炭水化物抜き)ダイエットがブーム。主食を抜く人が増えていますが、実はこれ、腸活の視点からは要注意!「腸活とダイエットは、ある意味“敵同士”なんです」と語るのは、大妻女子大学の青江誠一郎先生。主食を抜く生活が、腸にどんな影響を与えるのか――。その真相に迫ります。

食物繊維は野菜よりも主食から多く摂れる

実は、食物繊維は野菜よりも主食から多く摂れるって知っていましたか?

サラダをボウルいっぱい食べても、実はほとんどが水分。食物繊維はごくわずか。ロカボブームで炭水化物の多い主食を抜く人が増えていますが、炭水化物は「糖質+食物繊維」でできています。主食を減らしすぎると、必要な食物繊維も一緒に減ってしまうんです。糖質オフはほどほどに、1日3食きちんとバランスのとれた食事を摂るのが理想です。

食物繊維は、腸内の“善玉菌”のエサ。善玉菌が増えると、健康にいい成分が生み出され、腸脳相関で睡眠の質まで良くなることも。一方、悪玉菌が増えると腸内の腐敗物質が増え、肌荒れ、血糖値の上昇、代謝の低下、大腸がんリスクまで。

腸活=善玉菌を増やして悪玉菌を減らすこと。そのカギを握るのが食物繊維なんです。

また、腸壁には、毒素やアレルギー物質、ウイルスの侵入を防ぐバリアがあります。食物繊維が足りないと、善玉菌がそのバリアを食べてしまい、隙間ができたり腸壁が薄くなったり……。すると、異物が腸から血液中に入ってしまう「リーキーガット症候群」に。食物繊維をしっかり摂ることで、健康を守ることができます。

  • 水溶性食物繊維(発酵性食物繊維)
    果物、こんにゃく、海藻、大麦・オーツ麦根菜など。善玉菌のエサになり、腸内環境を整えます。
  • 不溶性食物繊維
    野菜、全粒穀物、豆類、ナッツ、きのこなど。便の量を増やし、腸の動きをサポート。

どちらもバランス良く摂ることが、理想の腸内環境への近道。
※レジスタントスターチは不溶性で唯一の発酵性食物繊維です。

炭水化物から食物繊維を摂った方がいい理由。

食物繊維の1日の摂取目標は、男性30~64歳は22g以上、同年女性は18g以上で、1食当たり7gが目安。主食を雑穀米、もち麦、玄米、ライ麦パン、全粒粉パンなど“色のある主食”に変えるだけで、簡単に数g増やせます。加えて、副菜で根菜、海藻、豆類も組み合わせれば、目標値もクリアしやすくなります。

炭水化物は冷やすことで、発酵性食物繊維の一種「レジスタントスターチ」が増えます。腸の奥で発酵して、善玉菌を効率良く増やすことができるんです。豆類やサツマイモ、トウモロコシ、玄米はもともとレジスタントスターチが豊富ですが、精白米も冷やすことで増えます。電子レンジで再加熱してもほとんど減りません。おにぎりやお寿司など冷たいご飯や、炊いたご飯を冷凍してレンジで解凍したものもおすすめです。

レジスタントスターチについてはこちらに詳しく解説しました。

  • ラーメン:麺にも食物繊維が多く、トッピングにトウモロコシやもやしをプラスするとさらに◎。ただし、スープの飲みすぎは塩分と脂質に注意。
  • 蕎麦:麺そのものが食物繊維たっぷり。ごまダレや海藻トッピングでさらにアップ。
  • おにぎり:玄米や雑穀米を使い、ひじきや枝豆を具材にすると食物繊維アップ。海苔も忘れずに。
  • カレーライス:具材を芋類にしたり、レジスタントスターチが豊富なタイ米で作るタイカレーもおすすめ。

キムチやヨーグルトなどの発酵食品は、善玉菌を直接補給できますが、腸に長くは留まりません。一方、レジスタントスターチなどの発酵性食物繊維は“今ある”善玉菌をしっかり増やしてくれる存在。最近は、発酵性食物繊維と善玉菌を同時に摂る「シンバイオティクス」も注目されています(例:ヨーグルト+果物や雑穀など)。

炭水化物を減らしすぎると、食物繊維が不足し、健康リスクが高まります。3食きちんと主食を食べて、1日に男性30~64歳は22g以上、同年女性は18g以上を目標に食物繊維を摂り、“正しい腸活ライフ”を送りましょう。

今回教えてくれたのは…

  • 大妻女子大学家政学部教授/栄養学者(食物繊維) : 青江誠一郎

    日本食物繊維学会理事長。食物繊維やメタボ予防に関する研究の第一人者で、NHK『あしたが変わるトリセツショー』での監修も話題に。「育菌カード」考案者としても知られる。

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  • ライター

    味澤彩子

    ライター歴20年以上、多数の女性ファッション誌や美容誌で活躍。
    趣味はバレエ鑑賞、韓ドラ、フランス旅行など、ハマるととことん
    突き詰める深掘り派。

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