腸に良い影響をもたらすとなんとなくわかっている“きのこ類”。「1日何g摂取すればいいの?」「 きのこって冷凍していいの?」 今更聞けない“きのこトリビア”を食用きのこのトップメーカー、ホクト株式会社の開発研究課に所属する、きのこのスペシャリスト森光一郎さんに伺いました。
Q1.きのこは1日に50g食べれば腸活に効果がある
答え:〇
きのこには多様な食物繊維が豊富に含まれています。これらが腸内細菌のエサとなることで腸活の効果があります。ホクトの臨床試験の結果、1日50g(約1/2パック)のきのこを4週間摂取することで、腸内の短鎖脂肪酸が増加し(※1)、免疫機能が向上する傾向が確認されています。ある1日だけきのこを50g食べるのではなく、継続的に食べ続けることも大事。きのこの摂取を習慣化することも重要です。
ただ、きのこの摂取とがんリスク軽減効果を調べた研究では、毎日18gを摂取することでがんリスクが約半分になることが報告されています(※2)。他にも、死亡率やうつ病リスクが軽減される(※3、4)というコホート研究(※5)の結果から、約20g食べ続ければ健康効果が得られるのでは? と考えています。これらの効果には腸内環境の改善も影響していると思います。ですので、4週間よりももっと長期的に摂取し続けるのであれば、毎日20gのきのこの摂取で、多様な腸内細菌のエサを腸に届けることができ、充実した腸活につながると考えています。
(※1)Nishimoto Y. et al., Dietary supplement of mushrooms promotes SCFA production and moderately associates with IgA production: A pilot clinical study. Frontiers in Nutrition, 2023,9: 9, 1078060.
(※2)Ba D. M., et al., Higher Mushroom Consumption Is Associated with Lower Risk of Cancer: A Systematic Review and Meta-Analysis of Observational Studies. Advances in Nutrition, 2021, nmab015.
(※3)Ba D. M., et al., Mushroom intake and depression: A population-based study using data from the US National Health and Nutrition Examination Survey (NHANES), 2005–2016. Journal of Affective Disorders, 2021, 294, 686-692.
(※4)Ba D. M., et al., Association of mushroom consumption with all-cause and cause-specific mortality among American adults: prospective cohort study findings from NHANES III. Nutrition Journal, 2021, 20:38.
(※5)コホート研究:共通の特性をもつ集団(コホート)を一定期間追跡し、特定の要因と健康状態の変化や疾病の発生との関連性を調べる疫学研究。
Q2.シイタケ、ブナシメジ、マイタケ・・・ など、きのこには様々な種類がありますが、どのきのこを摂取しても腸活の効果はある?
回答:〇
きのこは、スーパーで売られている範囲の食用きのこであれば、食物繊維の量はだいたい同じなので、腸活効果も同じくらいあると考えています。ただ、きのこごとに食物繊維の種類や組成が少しずつ違い、人の腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)も個人によって様々なので、効果の出方に差がある可能性はあります。腸活には、様々な腸内細菌のエサとなる、多様な食物繊維を摂取することが推奨されています。ですから、エリンギ、マイタケ、ブナシメジなどをそれだけで食べるよりも、数種類のきのこを混ぜて、毎日20g食べた方がよりよい健康効果が期待できると思います。そういった意味で、きのこだけではなく、野菜、穀物、果物などの食物繊維と一緒にバランスよく食べることも重要だと感じています。
Q3.お手軽食材きのこ。調理する時に洗った方がいい?
回答:×
ホクトの施設栽培のきのこは、衛生的な環境で人の手にほぼ触れられることなく、栽培、収穫され、パックされて店頭に並びます。石づきの部分にはコーンコブミール(トウモロコシの芯を粉砕したもの)や米ぬかなどで作られる培地の一部が付着していることがありますが、その部分さえ取り除けば、洗わずに調理することができます。逆に、洗ってしまうと水っぽくなるデメリットがあります。
ですが1つ注意点があります。ホクトの施設栽培のきのこは洗わずに調理することができますが、原木シイタケなどの屋外で栽培されたきのこや、天然のきのこは、衛生面からよく洗ってから調理することを推奨しています。
Q4.きのこは冷凍してしまうと、食物繊維の量が減ってしまう
回答:×
お米などは、冷やすことでレジスタントスターチが増加すると言われていますが、きのこには冷凍保存することでそういった報告はありません。逆に、食物繊維が減るといったこともないでしょう。
栄養価の面では差異はありませんが、旨味といった部分では変化します。きのこの代表的な旨味成分であるグアニル酸は、生ではほとんど無く、加熱中(特に60℃~70℃)に酵素の働きにより増えます。また、冷凍すると細胞が傷つき、加熱中の酵素反応が起こりやすくなったり、細胞中のグアニル酸が出やすくなったりするため、生のきのこよりも冷凍したきのこを調理した方が、旨味が出やすくなります。ただ、細胞が傷つくことで、食感が悪くなるため、「焼く」、「炒める」といった調理法の料理だと、水っぽくなってしまう傾向が。なので、冷凍きのこを使う場合は、スープや鍋などがおすすめです。
ただし、シイタケは冷凍での風味の劣化が著しいため、冷凍をおすすめしていません。
Q5.きのこは加熱すると食物繊維が壊れてしまう
回答:×
きのこに含まれる食物繊維は、加熱調理によって壊れにくい性質をもっているので、調理法によって腸活への効果が大きく変わることはないと考えています。特定の調理法にこだわる必要はありませんが、茹でた場合に、水溶性食物繊維が茹で汁に溶けだす可能性があり、茹で汁を捨てて食べる料理は、せっかくの食物繊維も捨ててしまう可能性があります。また、衛生上の観点から生のきのこは加熱調理を推奨しています。
Q6.シイタケの柄は、食べない方がいい
回答:△
きのこの柄は、培地が付着している部分を取り除けば、残りは食べることができます(硬い場合は刻むなどして)。石づきを切り過ぎているのでは? とロスを気にされる方もいると思います。例えばブナシメジは裏から見ると中央がへこんでいることがわかります。ですので、真っすぐ石づきを切り落とさず、まずは縦に半分に切った後、石づきの端から中央に向かって斜め上向きに切るとロスが少なくなると思います。
きのこは切り方によって食感が変化する食材。歯ごたえを強くしたい場合は、繊維に沿って縦方向に、柔らかな食感にしたい時は輪切りにするといいでしょう。また、多くのきのこは包丁を使わず、手で割いて調理することができます。手で割いた方が、タレなどは絡みやすくなるので、調理法によって変えることもおすすめです。
Q7.朝昼夜、どのタイミングで食べても腸活には有効
回答:〇

きのこに含まれている発酵性食物繊維が、善玉菌のエサとなり腸活に有意義に働くので、どのタイミングで摂取しても、腸活には有効でしょう。タイミングよりは継続的に食べることが重要だと思います。一度に大量の食物繊維を食べると、お腹が張りやすくなるなど逆に腸の調子が悪くなることもあります。朝、昼、夜のように分けて食べるほうが効率よく腸活ができると思います。
きのこにまつわるQ&Aいかがでしたか?
冷凍しても加熱しても食物繊維にはさほど影響がなく、屋内で栽培されたきのこなら洗いも無用というなんともお手軽なきのこ。ぜひ、1日50g目標で摂取していきたいですね!
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今回教えてくれたのは…
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ホクト株式会社 開発研究課 : 森光一郎
ホクト株式会社 開発研究課 薬学博士
2001年にホクト㈱に入社後、多数の研究機関ときのこの様々な健康効果を研究し発表。近年は主に、きのこによる腸内環境改善効果および、きのこに含まれる健康成分エルゴチオネインについて研究を進めてきた。より多くの人にきのこで健康を届けるため、きのこの健康効果を発信している。
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