肌のコンディション、髪のツヤ、疲れにくい体、そして穏やかな心。そのすべてに深く関わっているのが「腸」だということをご存じですか?腸内環境を整えることは、美容や健康を語る上で欠かせないテーマです。なかでも注目したいのが、腸の働きを左右する“自律神経”との関係です。順天堂大学医学部教授で、自律神経研究の第一人者・小林弘幸先生がおすすめするのは、生活習慣の中で続けられる自律神経を整える腸活。美容と健康を叶えるヒントは、あなたの生活の中にこそあるのです。
頑張らない方がうまくいく腸活・5つの生活習慣
自律神経が整い、血流が正常になると腸のむくみが取れ、腸内環境が良好に・腸に全体の7割がいるとされる免疫細胞がちゃんと機能してくれます。その腸を健康に保つ=腸活の3本柱は、「食、運動、睡眠」。決して無理をする必要はありません。忙しい毎日だからこそ生活習慣の中で続けられ、「頑張らない方がうまくいく腸活」をご紹介します。
朝はいつもより30分余裕をもって起きてみる

朝は、自律神経が副交感神経から交感神経に切り替わるタイミング。交感神経を活発に働かせることで、その日1日のパフォーマンスが上がります。朝、時間がなく慌ただしくしていると交感神経の切り替えがうまくいかず、1日の自律神経のバランスも不安定に。自律神経の働きと腸の働きに影響を及ぼすので、副交感神経→交感神経の切り替えをスムーズにするために朝余裕をもってすごしましょう。また、30分早く起きることで、朝食をとり、排便時間も確保できるはず。毎日トイレタイムを作り、排便リズムをつくることで自然と排便が促されやすくなります。便秘は腸内環境、自律神経のバランスが悪い証拠。症状がある人は、まずはリズムを作ってみるといいでしょう。
ジム通いの前に、階段で運動を心がけて

腸活には、腸を内側から、外側から両方からケアする必要があります。内側からのケアが食生活だとしたら、外側からのケアは運動になります。ジムに行って有酸素運動をしなくても大丈夫。日常的に階段を使うことを意識すればいいのです。階段は脚を上げたり、下げたりするので腸に刺激がいきます。また、脚の血流も促すので、腸にも、自律神経にもどちらにも効果的なのです。また、腸活においての運動は継続的に行うことも大事。負担にならず毎日続けられる運動ということで、階段の上り下りを推奨しています。
入浴は睡眠の3時間前までに

自律神経を整える腸活の3本柱は、食・運動・睡眠ですが、睡眠は入浴と密接に関わっています。活動的な朝、昼は、交感神経が活発に働いていることが理想ですが、就寝に向けて、リラックスモードになる副交感神経を優位にすると、質のいい睡眠がとれます。副交感神経を優位にするために効果的なのが入浴です。心地よい睡眠に入る準備をする時間と考えましょう。
副交感神経の働きを高め、腸の働きを整えるために理想的な入浴法は、39~40℃のややぬるいと感じるお湯に15分つかること。熱いお湯につかってしまうと、交感神経を刺激して逆効果に。また、夜はシャワーだけで終わらせてしまうと、体がきちんと温まらず、副交感神経の働きが悪くなり、血流も滞りがちに。夜、湯舟につかることも、腸活にとって重要です。また、入浴で温まった体内の熱が放熱され、皮膚温と体内温度が近づくことで心地よく眠れるので、就寝の2~3時間前まで入浴をすませるといいでしょう。
寝る1時間前にデジタルデトックス

腸の消化活動は夜中12時すぎ、副交感神経の働きが盛んな時に活発化します。リラックスをしている副交感神経が優位な状態のまま入眠すれば、質のいい睡眠がとれ腸もしっかり働くことができるのです。そして、翌朝のスムーズな排便につながります。ですが、就寝直前までスマートフォンで、動画やSNSを見たり、テレビを見ていると脳が覚醒し交感神経が優位になり眠ってからも副交感神経がうまく働かなくなってしまいます。その結果、眠りが浅くなるなど、質の悪い睡眠になり腸の働きも鈍くなってしまいます。腸の働きを最大限よくするためにも、就寝の1時間前にスマートフォンやテレビを見るのをやめ、12時前に寝ることを心がけましょう。
睡眠前に時間を作って呼吸を整える

1:2の呼吸法は自律神経を整えるので就寝前に3分ほど時間をとって実践して欲しいもの。1:2の呼吸というのは、鼻から3秒で吸ったら、口から6秒で吐くといった、吸う、吐くの時間の比率をさします。「腹式呼吸を」なんて意識しすぎてしまうと逆にストレスになってしまうので、時間だけを意識してくれれば大丈夫。この呼吸法で副交感神経が優位になるので、便秘が解消される割合も高いことがわかっています。
ほんの少しの工夫と習慣が、腸を整え、美しさと心地よさ、そしてしなやかな強さを育ててくれます。無理をせず、自分のペースで続ける“頑張らない腸活”は、毎日の小さな積み重ねがやがて大きな変化となり、あなたの肌も、心も、体も、自然に輝かせてくれるはず。今日から、その一歩を始めてみませんか。
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今回教えてくれたのは…
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順天堂大学医学部教授/日本スポーツ協会公認スポーツドクター : 小林弘幸
自律神経と腸の研究の第一人者。著書に『名医が教える自律神経できれいになるメソッド50』(ポプラ社)、『医師が教える1分腸活』(自由国民社)など多数。
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