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腸を良い状態にすることで体が元気になるテクノロジー

「肌の調子がいまひとつ」そんな小さな不調も、もしかしたら“腸”からのサインかもしれません。

腸のコンディションは、自律神経や免疫、さらには心の状態にも深く関わっていると言われています。けれど、「腸活」と聞くと、何か特別なことをしなければならないと感じてしまう人も多いのではないでしょうか?

そんな方にこそ知ってほしいのが、順天堂大学医学部教授であり、自律神経研究の第一人者・小林弘幸先生が教えてくれる「頑張らない方がうまくいく腸活」。今回は、“食生活”にフォーカスし、毎日の食事にほんの少しの工夫を加えるだけで腸が整う、簡単で続けやすい方法をご紹介します。

頑張らない方がうまくいく腸活・7つの食習慣

朝はまず口腔内をゆすいだ後、コップ1杯の水を一気飲みします。飲んだ水が胃に入るとその刺激で腸が動き始め、副交感神経が働きやすくなります。そのあとに朝食をとると交感神経がオンになり、自律神経の切り替えがスムーズに行われます。こうして交感神経と副交感神経のバランスが整うことで、便秘の予防にもつながります。消化器官に負担をかけないためには、よく噛んで、腹八分目に抑えることが大切です。

痩せやすい人と、太りやすい人がいるかと思いますが、実は両者で腸内細菌の構成比が違うことが最近わかってきました。さらにわかったのは、短鎖脂肪酸という有機酸を感知すると脂肪細胞は脂肪の蓄えを抑え、交感神経は刺激され代謝が活発になり痩せやすくなるということです。また短鎖脂肪酸は、大腸のエネルギー源になったり、基礎代謝、免疫力を高め、悪玉菌の増殖を抑える効果なども確認され、腸内環境をよりよくするため、スタイル維持という美容の面だけでなく美肌へのいい影響も。

短鎖脂肪酸は、善玉菌が発酵性食物繊維、発酵食品、オリゴ糖などをエサにし分解する時に発生します。つまり、食生活では、これらを意識して摂取することが、おすすめ。発酵性食物繊維は、炭水化物、海藻類、穀類、豆類、果物、ヨーグルト、漬物、味噌、はちみつなどを、腹八分目を意識し食べるようにしてください。

腸内環境をよくするために、腸内細菌である善玉菌を増やし、悪玉菌を減らすことが、大切ですが実は年を重ねるごとに、善玉菌であるビフィズス菌は減っていく傾向にあります。そこで有効なのがヨーグルト。市販のヨーグルトは主に乳酸菌だけのものと、乳酸菌に加えてビフィズス菌入りのものに分かれます。自分に合ったものを探してみるといいと思いますが、腸活、美容という観点からは加齢とともに減っていくビフィズス菌入りのヨーグルトがおすすめ。毎日200gを目安に摂取するといいでしょう。ただ、同じものを毎日摂り続けると一定の腸内細菌ばかり増えてしまい段々効果が薄れてきてしまいます。多様な腸内細菌を育てる上でも、1ヵ月ごとぐらいに、種類を変えるといいでしょう。

近年、日本人の腸内環境はひと昔前に比べると悪くなっていると言われ腸活に注目が集まっていますが、それは食生活の欧米化も関係しています。腸活には炭水化物、タンパク質、発酵食品、豆類、海藻類などがバランスよく食べられる和食が理想的。スーパーフードと言われる味噌を使った、味噌汁を朝、継続的に飲むことがおすすめです。味噌の原料である大豆は、交感神経を高める植物性タンパク質、食物繊維、ビタミンなどの栄養素が豊富な食材。発酵することで、さらに栄養価が高くなり腸内環境にだけではなく、髪や肌によい影響を与える栄養素も含まれています。味噌汁は具材を好きなように選べ、色々アレンジできるのも、多様な腸内細菌を育てる上でも◎。ぜひ、朝食にとり入れて!

ご飯は「美味しい」と感じながら、食べるとオキシトシンといういわゆる“幸せホルモン”が上昇し、副交感神経が優位になります。そうすると腸の動きが活発になり、代謝も上がり体重増加も抑えてくれます。慌てて食べると自律神経が乱れてしまうので、よく噛んで(できれば1口20~30回)ゆっくり食べるのもポイントです。コロナ禍では、感染症対策から1人で誰とも話さず、食事を楽しまず義務のように食事をしていた方も多い方と思います。コロナ禍で自律神経失調症が増えた理由の一因にもなっていると言われています。

私たちの体の60%は水でできているぐらいですから、自律神経にとって1番の強敵は脱水です。脱水することで自律神経の働きは低下してしまいます。夏場は熱中症が話題となりますが、熱中症は、自律神経の働きが弱まり体温調節ができなくなり発症します。汗をかいて脱水することで、そのリスクが高まってしまうのです。また、緊張している時に、水を一杯飲んで落ち着いた経験はありませんか? この現象は、正に自律神経が整うからなのです。理想的な自律神経のバランスを維持する上で、1日を通して「喉が渇いたな」と感じる前に細目に水を約1.5リットル飲むようにしてください。

空腹になりすぎると自律神経が乱れる原因になるので、適度な間食は悪いことではありません。ただ、スナック菓子や洋菓子に多く含まれる砂糖やトランス脂肪酸は悪玉菌を増やす原因になるのでおすすめできません。そこで、小腹が空いた時には、食物繊維が豊富な、アーモンドやくるみなどのナッツ類がおすすめです。ビタミンやミネラルやオメガ3脂肪酸も豊富なので、腸活以外にも直接的な美容効果も期待できます。1日に2~3杯のコーヒーを夕方前までに、飲むのもおすすめ。コーヒーのカフェインは、末梢血管を拡張し血流をよくし、交感神経を刺激し眠気解消、ストレス解消に役立ちます。

腸が整えば、自律神経のバランスも自然と安定し、肌や髪の美しさはもちろん、疲れにくく穏やかな心まで育まれます。それは決して難しいことではなく、毎日の食事にちょっとした工夫を加えるだけ。小さな一歩が、やがて大きな変化となってあなたを支えてくれます。今日から、無理のない“頑張らない腸活”を食卓に取り入れてみませんか。

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今回教えてくれたのは…

  • 順天堂大学医学部教授/日本スポーツ協会公認スポーツドクター : 小林弘幸

    自律神経と腸の研究の第一人者。著書に『名医が教える自律神経できれいになるメソッド50』(ポプラ社)、『医師が教える1分腸活』(自由国民社)など多数。

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  • ライター

    味澤彩子

    ライター歴20年以上、多数の女性ファッション誌や美容誌で活躍。
    趣味はバレエ鑑賞、韓ドラ、フランス旅行など、ハマるととことん
    突き詰める深掘り派。

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